食品表示法の改正に伴う新しい食品表示制度への経過措置の猶予期間が今月末に迫ってきています。新しい食品表示制度では、一般用加工食品に栄養成分表示が義務付けられるようになりました。表示が必要な栄養成分は熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5項目となっています。

通常これらの栄養成分は、
たんぱく質:ケルダール法、燃焼法 / 脂質:エーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、酸分解法など / 食塩相当量:原子吸光光度法でナトリウム量を分析し、そこからの計算値で求めるという、分析で求められる項目と、

炭水化物:検体の質量(通常は100g)から、水分、たんぱく質、脂質、灰分を差し引いて求める。 / 熱量(エネルギー量):たんぱく質4kcal/g、脂質9kcal/g、炭水化物4kcal/gの合計で100gあたりの値として求めるという、計算値で求められる項目があります。


この中で炭水化物については、直接測るのではなく全体からの差し引きで求められる値となることに注意が必要です。


というのは、熱量を求める際の換算値として通常、炭水化物は4kcal/gとされていますが、炭水化物には糖質と食物繊維があるためです。糖質には砂糖やブドウ糖のような単糖類・二糖類・オリゴ糖や、デンプンや糖アルコールなどが含まれます。一方食物繊維には水に溶ける水溶性食物繊維(soluble dietary fiber:SDF)と水に溶けない不溶性食物繊維(insoluble dietary fiber:IDF)があります。

水溶性食物繊維にはペクチン、グルコマンナン、イヌリン、糖アルコール、難消化性オリゴ糖、難消化性デキストリンなどが、不溶性食物繊維にはセルロース、ヘミセルロース、リグニン、寒天、キチン、キトサンなどがあげられます。また水溶性・不溶性いずれも含むものとしてβグルカンがあります(下図)。


熱量を生み出す原料としての炭水化物を考えた場合、ショ糖やブドウ糖などの糖質は体内に分解・吸収されてエネルギー源となるのは理解し やすいですが、食物繊維は通常消化されず体内に取り込まれないため、これを糖質と同様にとらえて計算してしまうと実態にそぐわない熱量の値が出てくることになります。


例えば、次のような食品があるとします。
 水分 5 g / 100 g
 たんぱく質 0 g / 100 g
 脂質 0 g / 100 g
 灰分 5 g / 100 g
 炭水化物 90 g / 100 g
この場合、炭水化物は全体から水分、たんぱく質、脂質、灰分を差し引いた値なので、90 g / 100 gとなります。そしてこの食品の90%以上が砂糖だとします。
 この食品の熱量を求める場合、たんぱく質、脂質は含まれていないので、 熱量計算の対象となるのは炭水化物のみとなり、
 4 kcal / g x 90 g / 100 g = 360 kcal / 100 g
となります。一方、これが砂糖でなくセルロースだったとしても、炭水化物なのには変わりがありませんので、そうすると100 gが360 kcalに相当することになってしまいます。なんだかおかしいと思われるのではないでしょうか。


ちなみに、食物繊維の熱量は0~2 kcal / gであると考えられています。消化されないためにカロリーはゼロという イメージがありますが、実際には腸内細菌が発酵分解に利用してエネルギーを産生することが知られており、少ないながらも熱量があると考えられています。なお食物繊維の種類により、分解されやすい /されにくい素材があります(例えば寒天やセルロースは0 kcal / gですが、難消化性デキストリンやビートファイバーは1 kcal / g、難消化性デンプンや小麦胚芽は2 kcal / g)。自分で配合を把握している場合であれば個々の成分について熱量計算を行うことも可能ですが、受託分析では対象食品の詳しい配合までは分からないため、食物繊維の場合は一律に2 kcal / gに換算することになっています。


このように、食品中の原材料によっては、一律に炭水化物とみなしてしまうと本来よりも熱量が高く算出されてしまうことがあります。


この点を解消するために、通常は食物繊維量の分析が行われます。分析方法として、酵素処理で食物繊維以外の栄養成分を取り除き、その重さからたんぱく質及び灰分の量を差し引いて食物繊維の量を求めるプロスキー法(酵素ー重量法)と、プロスキー法で調製した検体を更にHPLCを用いて食物繊維のピークを測り、そこから食物繊維の量を求める高速液体クロマトグラフィー法(酵素-HPLC法)の2つがあります。

プロスキー法は簡便で信頼性が高い方法として世界的に認められており、日本でも食品表示基準や日本食品 標準成分表の分析方法として採用されています。難点としては、窒素を含む食物繊維(キチン・キトサンなど)はたんぱく質として定量されてしまうこと、また低分子の水溶性食物繊維を含む食品では原理的に食物繊維として正確に量れないことなどがあるため、その場合は高速液体クロマトグラフィー法を併用して測定します。


食物繊維のヘルシーなイメージを目指してレシピを組んでみたものの、栄養成分分析をしてみると思ったよりも熱量の値が高く出てしまうなど、食物繊維の分析を行ってみることをお勧めします。

当研究所ではプロスキー法(酵素ー重量法)の分析を承っていますので、ぜひご用命ください。
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