(株)鹿光生物科学研究所は食品の分析及び開発受託を請け負う分析機関です。天然着色料の取り扱いには自信があります。

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クチナシ黄色素

名称 クチナシ黄色素/Gardenia yellow
概要 「本品は、クチナシ(Gardenia jasminoides J.Ellis(Gardenia augusta Merr.))の果実から得られた、クロシン及びクロセチンを主成分とするものである。デキストリン又は乳糖を含むことがある(第9版食品添加物公定書)」
INS No. 164 E No. なし
色調 黄色 染着性
溶解性(水) 溶解性(油) ×
耐熱性 耐光性
金属の影響 なし タンパクの影響 なし
分類 既存添加物/食品添加物公定書
特徴 酸性でやや不安定/pHによる色調変化なし
ニチノーカラー Y-KH(液体)/Y-40L(液体/高濃度品)/Y-S15P(粉末)/Y-3000(顆粒)/クチナシT-O(油分散性)
食品への表示例 クチナシ色素、クチナシ黄色素、カロチノイド色素、カロテノイド色素、着色料(クチナシ)、着色料(カロチノイド)、着色料(カロテノイド)、着色料(クロシン)
使用基準 本品は以下の食品には使用できません。1.こんぶ類、食肉、豆類、野菜類、わかめ類(これらの加工食品は除く)。2.鮮魚介類(鯨肉は除く)、茶、のり類

更新履歴
2021/7/1 更新(入手方法を追記)


来歴

クチナシは中国の書物「神農本草経」に山梔子として収載されている素材で、漢方原料として消炎、利尿、止血剤として用いられてきた他、飲食物の着色にも用いられてきました。その果実から得られた色素は日本でも、栗の甘露煮や沢庵などの漬物の着色に、また台湾では紹興酒の着色にも使われているという歴史があります。

このクチナシ黄色素の本体はカロチノイド色素の中でも珍しい2つの水溶性の色素、クロシンとクロセチンです。クロシンは右図に示したようにクロセチンにゲンチビオースという二糖類が2つついたエステル化合物で、クチナシの果実から水や含水アルコールで抽出されます。

※カロチノイドについては以下の解説もご参考下さい。

「天然色素-カロテノイド(カロチノイド)」


 なお抽出したままの状態では不純物であるイリドイド化合物(ゲニポシド)が含まれており、これがゲニピンに変化してアミノ酸やたんぱく質と反応して青く発色し、緑変する場合があります。従って現在は通常は精製処理したものが用いられており、また食品添加物公定書でクチナシ黄色素に残留するゲニポシドの規格値が定められています。

 クチナシ黄色素はpHの影響はほとんど受けませんが、pH3以下の酸性下では沈殿が起きることがあります。またアルカリ性にするとクロシンがクロセチンに変化し、色調が青みを帯びた黄色に変わります。このような性質から飲料には適しませんが、タンパク質やデンプンへの染着性が強い特徴があり、アルカリ性で安定なため、中華麺によく使われています。


中華麺

 小麦粉を原料とした麺類には、うどん・そうめんなどのように強力粉~中力粉に食塩と水を加えて作られる麺と、中華麺に分類される、強力粉などの小麦粉にうどん・そうめんの食塩ではなく強アルカリ性のかん水を加えて作る麺などがあります。また中華麺に準じて餃子や焼売、春巻きの皮などにもかん水が使用されることがあります。ちなみに「生めん類の表示に関する公正競争規約」というものがあり、かん水を使用しない麺は「中華麺」「ラーメン」と表示することはできないことになっています。


 かん水は元々草木灰を水に溶いた、ミネラルを多く含むアルカリ水がかん水とされていましたが、現在は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸塩の1種以上を含むもの、もしくはこれらの水溶液か小麦粉で希釈したものと定義されており、食品添加物の扱いになっています。かん水は小麦粉と混合するとタンパク質中のグルテンに作用して麺のコシや風味をつけたり、生地を収斂させて弾力をつけたりする働きがあります。その他にも小麦粉の胚乳に多く含まれるフラボノイド色素に作用してそれを黄色に発色させる作用があります。昔は小麦の精製技術が未発達で色素を十分に除去できない小麦粉が流通したため、かん水と合わせると黄色く着色して、それが中華麺の黄色とみなされていました。現在は精製技術が発達して小麦粉は純白に近い色になっていますが、逆に精製度が高いほど色素成分は少なくなるため、その小麦粉をかん水で処理しても昔ほどの黄色の麺にはなりません。そこで同じカロテノイド色素であるクチナシ黄色素を加えて黄色を補うということが行われています。



クロシンとクロセチン

 黄色色素のクロシンは、上記の構造式に示したように炭素数20のカロテノイドであるクロセチンに二糖類の一つであるゲンチオビオースが2分子エステル結合した物質で、クチナシ果実の中で熟成に伴い、果肉の中心部から外側、果皮に向けて産生されます。クロシンは赤味がある黄色ですが、かん水などアルカリ溶液下におかれるとゲンチオビオースが外れてクロセチンとなり、クロシンと異なる青味の色調をもったレモンイエロー様の黄色に変化します(右写真)。クロセチンはクロシンよりも染着性に優れており、アルカリ溶液にはよく溶解しますが、酸性下では不溶化する性質があります。 


 中華麺に使用する場合、かん水とクチナシ黄色素を混合すると、クロシンはアルカリ加水分解を受けて徐々にクロセチンに変化していくため、色調が変化してしまいます。また長時間色素とかん水を混ぜた状態で置いておくと、色素の凝集沈殿が生じることがあります。そのために麺の色むらや、製造設備への色素の沈着などが起きる原因にもなります。それを避けるために、日農化学工業(株)では、あらかじめクロセチン化して色調が変わらないように工夫したクチナシ黄色素の製剤を開発しています。

 この製剤は上の写真でも分かるように、従来のクロシン主体のクチナシ黄色素と比べると青味のある色調のために黄色の色合いが薄いように見られますが、麺を作る際のかん水の濃度や温度、捏ね水(こね水)の作り置く時間に関わりなく、常に安定した色調の麺帯を作ることが出来る使い易い色素です。


入手方法

ここで使用している色素は通販サイト「Natural Color & Food」で購入できます。なお顆粒品は粉末品の2倍濃い色素の製剤になります。


着色例

錦玉羹(琥珀羹)の着色
アメリカンドッグの着色
チュロスの着色
スープの着色
クッキーの着色
チョコレートの着色
あんこ(餡)の着色
練り切りの着色
パンの着色
かまぼこの着色
ホイップクリームの着色
饅頭の着色(2)黄~橙色系
ポップコーンの着色
アサリ佃煮の着色


株式会社鹿光生物科学研究所ではクチナシ黄色素を用いた食品の着色について、これまでに培った様々な知見をもとに、お客様のご要望に沿った色彩の食品開発を支援しております。色調や安定性など、食品の色に関することはなんでもお問い合わせ下さい。

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