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天然の青色色素

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2021/11/10 作成


天然の青色色素 

 

食品添加物(着色料)として、日本で認められている青色の天然色素としては、以下の3つが知られています。

・クチナシ青色素

・スピルリナ色素

・チョウマメ色素(バタフライピー色素)

このうちクチナシ青色素とスピルリナ色素は既存添加物で、チョウマメ色素は2019年に一般飲食物添加物として新規に届出された色素になります。

これら3つの色素にはそれぞれ特徴がありますが、客観的に比較した記事はこれまであまり見かけませんでした。そこで今回比べてみました。


評価内容

1.着色見本
 ①水溶液、pHの影響
  透明水溶液   :同濃度になるように水で調整
  不透明溶液   :同濃度になるように乳飲料(ドリンクヨーグルト)で調製
    pHの影響を見るために、pHを3~7に変えてそれぞれ調製しました。
 ②クッキー
 ③チョコレート

2.耐熱性、耐光性

 ①耐熱性
 ②耐光性

まとめ 


1.着色見本

①水溶液、pHの影響
透明水溶液

 透明の水溶液のイメージとしては、お茶、飲料、ゼリー、氷菓などが思い浮かびます。ベースが透明なので、各色素の色合いがもっともシンプルに現れる素材とも言えます。また水溶液のためpHがあり、配合される原材料によって酸性になったりアルカリ性になったりします。

 ここでは3種類の青色色素を、色の濃度が揃うようにしてpH3~7の透明な水溶液でそれぞれ調製しました。右の写真が色素液です。あわせて色調を表すL*a*b*値を調べて図にしました。(L*a*b*値についてはこちらを参照くださいー天然色素/天然着色料の色調の表し方(色差)) 

 クチナシ青色素とスピルリナ色素はほとんどpHの影響を受けませんでしたが、クチナシ青色素はpHが低いと沈殿する性質があるため、今回の試験でも写真の状態でそのまま置いておくと沈殿が見られました。
(pHが低くても沈殿しないクチナシ青色素もありますー詳細はこちら(クチナシ青色素)

 各色素の色合いですが、クチナシ青色素はやや黄色味がある青色、スピルリナ色素は鮮明な青色、そしてチョウマメ色素はpHの違いで赤紫色から青緑色に色が変化しました。a*b*値を見ると、pH4でのチョウマメ色素とクチナシ青色素の値が接近していて、色合いも比較的よく似ていることが分かります。

 


不透明溶液(乳飲料)

 不透明な水溶液のイメージとしては乳飲料や野菜系飲料などが思い浮かびます。またパン・うどん・和菓子・洋菓子など小麦粉を使い白い生地を作る食品とベースの色合いが似ているため、それらを着色する際の参考にもなります。ただし水溶液なのでpHがあり、配合される原材料によって酸性になったりアルカリ性になったりします。

 ここでは3種類の青色色素を、色の濃度が揃うようにしてpH3~7の不透明の溶液(ドリンクヨーグルト)でそれぞれ調製しました。右の写真が色素液の写真です。あわせて色調を表すL*a*b*値を調べて図にしました。(L*a*b*値についてはこちらを参照くださいー天然色素/天然着色料の色調の表し方(色差)) 

 クチナシ青色素とスピルリナ色素はほとんどpHの影響を受けませんでしたが、スピルリナ色素はpHが高くなるのに伴って青色が濃く見える(濃色化)ような傾向が見られました。下のL*a*b*図でもL*値の低下(暗くなる)やb*値の低下(青色味が強くなる)が見られました。また透明の溶液と同様にクチナシ青色素はpHが低いと沈殿する性質があり、写真の状態でそのまま置いておくと沈殿が見られます。(pHが低くても沈殿しないクチナシ青色素もありますー詳細はこちら(クチナシ青色素)

 各色素の色合いですが、クチナシ青色素はやや黄色味がある青色、スピルリナ色素は明るい青色になりました。チョウマメ色素はpHにより赤紫色から青紫色に色が変化しましたが、変化の程度は透明溶液ほどではありませんでした。透明溶液では一部のpHでクチナシ青色素とチョウマメ色素が似た色合いになりましたが、不透明な液の場合はいずれのpHも異なる色あいになりました。

 

 


②クッキー

  代表的な焼き菓子であるクッキーのレシピで着色見本を作りました。作り方はシンプルに薄力粉と砂糖を混ぜ、それにマーガリンなどの油脂と色素を入れ、生地をまとめました。その後麺棒で延ばし、型抜きを行いオーブンで焼いて焼成しました。色素の添加量は同じ色濃度になるように調製しました。

 その際の写真と色合い(L*a*b*値)を示しました。クチナシ⻘⾊素と⽐べてチョウマメ⾊素は若干⾚みのある青色、クチナシ⻘⾊素は黄色味がある緑⻘⾊、またスピルリナ⾊素は緑色味のある⻘色を示しました。色合いを⾒ると、L*値はチョウマメ⾊素がわずかに低い傾向を示しました。また a*b*を⾒ると、b*値はいずれの⾊素もほぼ同様の値でしたが、a*値がチョウマメ⾊素が高く(赤色傾向)、クチナシ青色素は中程度、スピルリナ色素は低値(緑色傾向)を示し、見た目を反映した結果になりました。


 

 

 


③チョコレート

  手軽に色付けができるチョコレートを素材にして着色見本を作りました。方法は市販のホワイトチョコレートを湯煎で溶かし、それに色素を加えて型に入れて冷やし固めました。色素の添加量は同じ色濃度になるように調整しました。

 その時の写真と色合い(L*a*b*値)を示しました。クチナシ⻘⾊素とチョウマメ⾊素は同じ青緑色系ですが、クチナシ青色素のほうが濃い色合いを、スピルリナ色素はこれらとは異なる水色様の明るい青色を示しました。色合いを⾒ると、L*値は意外ですが3色素の中でスピルリナ色素の値が最も低くなりました。 a*b*値は、チョウマメ色素とクチナシ青色素ではb*値はほぼ同様で、チョウマメ⾊素のa*値がやや高い(赤色傾向)傾向を示しました。一方スピルリナ色素は見た目でもわかるように他の色素とは明らかに異なるa*b*値になりました。クッキーと異なる結果でしたが、これはおそらく、焼き工程があるクッキーとないチョコレートということで、熱にあまり強くないスピルリナ色素の特徴がチョコレートでは強く現れたためと考えられます。



2.耐熱性・耐光性

①耐熱性

  3種類の色素の耐熱性を比較しました。方法は、同じ色濃度(正確にはOD=1)になるように水で調製した色素液を80℃の湯煎中に120分間(2時間)静置して、湯煎前後の色の減少程度を色素残存率という値で示しました。その結果を右図に示しましたが、スピルリナ色素は30分の加温で完全に退色してしまいました。一方クチナシ青色素とチョウマメ色素は高い安定性を示し、120分後でも8割以上の色が保持されていました。

 スピルリナ色素の項でも説明していますが、この色素はタンパク質がついた色素のため、加温するとタンパク質が変性して色素としての特徴を失ってしまいます。しかしながら実は、ある程度色が残ることもあります。それは素材の水分量が少なかったり、レシピに配合されている原材料がタンパク変性が抑える働きをしている場合などが考えられます。従ってスピルリナ色素の耐熱性が弱いことはよく知られていますが、食品によっては思ったよりも色が残った、ということもあるので、一度試してみてもよいのではないかと思います。


②耐光性

 3種類の色素の耐光性を比較しました。方法は、同じ色濃度(正確にはOD=1)になるように水で調製した色素液を耐光性試験用のLEDで30,000ルクスの光を2日間(48時間)照射して、照射前後の色価の減少程度を残存率という値で示しました。なおこの光の照射量は、ショーケースなどで使われる照明の照度2,000ルクスで約1か月間当て続けた量に相当します。その結果を右図に示しましたが、安定性の高さはスピルリナ色素>クチナシ青色素>チョウマメ色素の順となりました。

 

 


まとめ

ここでは、日本で食品添加物(着色料)として認められている3つの天然青色色素について、各色素の特徴を色合いや性質などを調べて比べてみました。その結果、それぞれ以下のような特徴があることがわかりました。

・チョウマメ色素:3つの中では唯一、pHにより他の着色料には見られない色合いで色調が変化するのが特徴の色素です。その色合いは透明な素材で特に際立ちます。安定性については、耐熱性はあるものの耐光性は3つの青色色素の中ではいまいちの結果でした。

・クチナシ青色素:色合いがやや暗い特徴がありますが、3つの中では耐熱性、耐光性ともに高く、また他2つの色素は現状では濃度が濃い製剤が出回っていないのに対してクチナシ青色素は濃い製剤があり、様々な食品加工に使いやすいのが特徴です。日本ではよく使われている色素ですが、海外ではあまりなじみがないため、使える国が限られてしまうのが難点です。

・スピルリナ色素:3つの中では最も鮮明な(水色に近い)天然色素っぽくない青色が特徴の色素です。基本的に耐熱性が強くないので、あまり熱をかけない食品、冷菓やゼリ、クリームなどへの利用に向いていると思われます。また3つの色素の中では海外でも着色料として認められていることが多い色素です。

 


株式会社鹿光生物科学研究所では天然色素を用いた食品の着色について、これまでに培った様々な知見をもとに、お客様のご要望に沿った色彩の食品開発を支援しております。色調や安定性など、食品の色に関することはなんでもお問い合わせ下さい。

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