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天然色素/天然着色料の色調の表し方(色差)

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天然色素/着色料は各社から様々な種類、規格のものが販売されていますが、実際に使われる方が一番気にされるのはこのようなことではないでしょうか。

・この天然着色料はどのような色調なの?
・A社の天然着色料とB社の天然着色料を見比べてみたが少し色合いが違うように見える。具体的にどう違うのか客観的に説明できないか?
・食品の色調を管理したいが数値で規格化できるようにならないか?

このような疑問を解決するキーワードである『色差』を説明します。


更新履歴
2021/5/17 新規作成


色差

 色差(Color Difference)は色調を数値的に表したものです。食べ物だけではなくあらゆる分野にわたり、色がついているものにはほとんどといってよいほど、色調を数値化して管理したいという需要があります。ちょっと考えただけでも
 ・塗料の色調の管理
 ・ディスプレイの色調の管理
 ・印刷、インクの色調の管理
 ・工業用品の色調の管理
 ・ライトなど照明器具の色調の管理
などをあげることができます。

 このように様々な分野で色調の管理は必要とされていることから、幾つかのルールが設けられ、各分野で使いやすいようにアレンジされてきました。よく知られているものとしてマンセル表色系とXYZ表色系があげられます。その中で着色料の色調を表現する方法としてよく用いられているのは、マンセル表色系の一つであるL*a*b*表色系です。

L*a*b*表色系


 色調を数値化する場合、数値と見た目が乖離していると使いづらいものになります。XYZ表色系は赤・緑・青の3色を足し合わせたRGB表色を元にしています。しかしながら人の眼は全ての色の光に対して同じ感受性を持ってはいないため、色によっては数値では非常に大きな違いがあるのに、見た目ではほとんど違いが見られない、というようなことが起きます。例えば右図のXYZ表色系は緑色の部分が大きな割合を占めています。これは人の眼が、赤色や青色と比べて緑色の違いにあまり敏感でないということを示しています。


そこでどの色でも数値が変われば同じように色の変化を感じることができるような表現方法として、現在よく使われているのがL*a*b*表色系(CIE1976 L*a*b*色空間・CIELAB)となります(右図)。L*a*b*表色系は色の明るさをL*値(明度)、赤色⇔緑色の軸をa*値、黄色⇔青色の軸をb*値として表します。右の図は色度図といい、L*値の表記はありませんが実際にはZ軸方向、つまりこの円を球体ととらえて、画面の手前⇔奥方向がL*値になります。L*値は0から100まであり、0は黒、100は白を示し、値が大きいほど明るいということを示します。また色度図の中心から離れるほど(数値が大きくなるほど)、彩度が増し鮮やかな色となり、逆に中心に近づくほど(数値が小さくなるほど)彩度が減りくすんだ色を示します(色度図の通り)。


色差の測り方

 では色差は具体的にどのようにして求めるのでしょうか。
 色差を求める時には通常は色差計、色彩計という専用の装置で測ります
。また色価を測る際に用いる分光光度計を用いて、ソフトウエア的に色差に変換して値を求めるということも行われます(右写真)。
 具体的な測定原理は専門的な話になるのでここでは割愛しますが、イメージとしてはセルといわれる測定容器に検体を入れて装置にセットすることで、L*a*b*値が出力される、というものになります。


 では実際に天然色素を色差計で測定すると、それぞれの色は色度図のどの位置に該当するのでしょうか。日農化学工業(株)の色度図の資料を以下に示しました。またおおよそですが、合成色素の位置も併せてこの色度図の中に記載しました。

 これを見ると、天然色素は比較的赤系の色素の種類が多いことが分かります。これは特にアントシアニン色素が作物により様々な色調があるためです。黄色はクチナシ黄色素やベニバナ黄色素、ウコン色素やカロテン類色素などがあります。一方青色はクチナシ青色素とスピルリナ色素のみになります。緑色は単色ではクロロフィルがありますが、青色色素と黄色色素を組み合わせた混合色で様々な緑色を表現することができます。このように色差を元にして、各色素の位置を色度図にわかりやすい形にまとめて比較することができます。



色調の違いの表し方

 例えば右の写真のように、ムラサキイモ色素とトウガラシ色素では見た目では明らかに色調が異なります。ではこの色調の違いはL*a*b*表色系ではどのように表されるのでしょうか。

 L*a*b*測色系では色調の違いはΔEという値で表されます。ΔEを分かりやすく説明すると、下図に示したようにL*a*b*をそれぞれxyz軸と見立て、それに基準となる色調のL*a*b*値と比較対象とする色調のL*a*b*値をそれぞれ立体的に配置して、その間の距離を求めたものになります。
 



では、ある色素と別の色素のΔEを求めたところ、値が3だったとします。この場合どのように評価すればよいのでしょうか。

 一般的には以下のような判断基準が用いられています。

ΔE=1 2つの色を並べて見比べた時に違いが判別できるレベル
ΔE=3 2つの色を離して見比べた時に違いが判別できるレベル
ΔE=5 2つの色を代わるがわる見比べた時に違いが判別できるレベル

 つまりΔEが3ということは、色素同士を離して見比べた時に色の違いが分かる程度に色調が異なるということになります。見比べるという行為には見る人の主観が入るため、同じものでも人により色調の違いが分かったり分からなかったりする場合がありますが、このように数値化することで、色調が同じなのか違うのかを客観的に評価できるようになります。


 では逆に、ΔEがどの値までは同じ色とみなされるのでしょうか。これについては、通常はΔEが2~3程度だと同じ色とみなされることが多いようです。これはJIS Z 8721やJIS L 0809などのJIS規格において、ΔEが1.6~3.2にある場合は標準色と対象色で同一とみなされる(許容色差範囲)とされているということによります。

 ちなみにΔEが10を超えると、別の色の名前になる程度まで明らかに色調が変わるとされています。上記のムラサキイモ色素とトウガラシ色素はこれに該当するものと考えられます。


天然色素でのL*a*b*表色系の使われ方

 実際に天然色素の場合、L*a*b*表色系はどのような状況で使われるのでしょうか。ちなみに、今までに頂いたお問い合わせとしては
 ・合成色素から天然色素に置き換えたいが色調をなるべく近づけたい
 ・A社の色素からB社の色素に切り替えたいが色調が変わってしまうと困るので確認したい
 ・着色した加工食品の保管条件と色調の変化の関係を検証したい。
 ・pHや色調に影響を与えそうな副原料の添加量と色調の関係を確認したい。

というものがありました。色調を比較する際には写真で見比べるのも一つの有効な手段なのですが、「AとBを比較するとややb*値が高い(黄色味が強い)/L*値が低い(暗い)」など、より具体的に色調の違いを示すことができるのが色差のメリットです。


 なお分光光度計では液体しか測れませんが、色差計など専用の機械は粉末や着色した食品そのものの色調も測ることができます。当研究所ではそのような分析も実施しております。詳細についてはお問い合わせ下さい。


参考資料:
片山脩、田島眞共著、光琳選書2食品と色、光琳
第9版食品添加物公定書
色度図作成ソフトColorACのページ  http://phonon-spectrum.com/ext-link.html
コニカミノルタのWebページ


株式会社鹿光生物科学研究所は食品添加物(天然着色料)について長年の知識と経験を持っております。ご不明な点等がありましたらお問い合わせ下さい。

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