名称 | ベニコウジ色素(モナスカス色素)/ Monascus color | ||
概要 | 「本品は、ベニコウジカビ属糸状菌(Monascus pilosus及びMonascus purpureusに限る。)の培養液から得られた、アンカフラビン類及びモナスコルブリン類を主成分とするものである。(第9版食品添加物公定書)」 | ||
INS No. | なし | E No. | なし |
色調 | 橙赤~赤色 | 染着性 | ◎ |
溶解性(水) | 〇 | 溶解性(油) | × |
耐熱性 | 〇 | 耐光性 | △ |
金属の影響 | なし | タンパクの影響 | なし |
分類 | 既存添加物/食品添加物公定書 | ||
特徴 | 酸性で不溶化(※)/pHの影響なし ※耐酸性が改善された製品もある |
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ニチノーカラー | MNS(液体)/MNS-P3(粉末) | ||
食品への表示例 | ベニコウジ色素、モナスカス色素、着色料(ベニコウジ)、着色料(紅麹)、着色料(モナスカス) | ||
使用基準 | 本品は以下の食品には使用できません。1.こんぶ類、食肉、豆類、野菜類、わかめ類(これらの加工食品は除く)。2.鮮魚介類(鯨肉は除く)、茶、のり類 |
来歴
麹菌(コウジカビ)は古くから日本酒、味噌、漬物、醤油、焼酎など日本の発酵文化に不可欠の素材として古くから使われてきました。その中で発酵で赤色の色素を産生する麹菌を紅麹菌、得られた色素をベニコウジ色素と呼ばれるようになりました。
なおベニコウジ色素は紅麹菌の赤色そのものですが、紅麹にはその他に黄色の色素も含まれており、ベニコウジ黄色素として別個に収載されています。
紅麹菌を用いて作られる代表的な加工食品は中国や沖縄で紅酒や紅豆腐(沖縄名:豆腐よう、写真)で、中国や沖縄で古くから食されてきました。また漢方としても利用されており、中国の書物「本草綱目」にも記載があります。
紅麹色素アンカフラビン/モナスコルブリン
紅麹菌から得られる赤色の色素の主体はアンカフラビン(Ankaflavin)やモナスコルブリン(Monascurubrin)といった、基本骨格ブテノリド(ブテノライド)に置換基が異なる幾つかの化合物です。これらは培養液中のタンパク質、ペプチド、アミノ酸と反応して水溶性の複合体を形成して水溶性の赤色色素を呈します。
私たちはこの赤色の色素に着目して食品に利用してきましたが、元々これらの物質は、紅麹菌が自らの増殖を促進するための二次代謝物として産生したものです。昔は米やパン粉を用いた固体培養法が主流でしたが、近年はより効率化しやすい液体培養法が主流になっています。なおこの色素は水やエタノール、プロピレングリコールには溶けますが、油脂には溶けません。
pHに対する色調の影響はなく、耐熱性は比較的優れています。またタンパク質への染着性がよいため、水産練り製品に多く使用されます。その一方で耐光性が低く、特にpHが低いと影響を受けやすいという性質があります。また酸性・高塩性の環境下では沈殿することがあります。
用途
用途としては、耐熱性がよく、タンパク質への染着性もよいことから、水産練り製品やかまぼこの着色に広く使用されています。その他ではハム・ソーセージや菓子、冷菓などにも使用されています。
このように日本ではほとんどの人が知っている、なじみが深い麹菌による色素ですが、海外では知られていないこともあり使用できる国が限定されてしまうのが難点です。現在使用できるのは韓国や中国、台湾に限られています(注)。
注:海外では日本とは異なり、天然色素でも使用できる食品や最大使用量が決められていることがあるため、現地の食品添加物リストに記載があっても、目的の食品に使用できないということがあるためご注意ください。
着色例
・辛そうな中華麺
・錦玉羹(琥珀羹)の着色
・パンの着色
・かまぼこの着色
・ホイップクリームの着色
・乾燥こんにゃく粉の着色
・饅頭の着色(1)赤色系