かまぼこの着色

日本では誰でも知っている代表的な水産加工品であるかまぼこ(蒲鉾)は、古くには平安時代から既に食されていたとされ、現在でも紅白蒲鉾やお節料理の定番品でもあるなど、高級な贈答品として用いられてきました。

かまぼこはタラなどの白身の魚を原料にして、卵白や食塩、砂糖、みりんなどを加えて練り合わせ、蒸したり焼いたりして熱を通して成型します。従って天然色素を用いる場合にはタンパク質の割合が多いこと、pHが中性域であること、副原料として食塩を含んでいることなどを考慮する必要があります。


かまぼこの着色は以前一度行いました(かまぼこの着色)が、そこで試作した方法は通常の白いかまぼこを色がついた液に浸漬して、着色の度合いをみたものでした。かまぼこに色をつけるもう一つの方法としては、かまぼこを作る際に予め色素を添加する方法があります。しかしながらかまぼこは蒸す工程が入るため、熱に弱い色素では退色してしまうことも考えられます。そこでかまぼこの生地に色素を添加し、蒸してかまぼこを作ってみました。

ちなみに、かまぼこのようなタンパク質が多い素材の着色に対しては通常、染着性がよく移色しにくい色素が選択されます。天然着色料にはタンパク質によく染着するものと染着しないものがあり、一般的には以下の傾向があることが知られています。

染着性が強い 水溶性アナトー、ウコン色素、ベニコウジ色素、カカオ色素、ラック色素、コチニール色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素など
染着性が弱い βカロテン、トウガラシ色素、クロロフィルなど

 この条件を満たす色素として最もよく使われているのはコチニール色素、ラック色素です。非常にきれいなピンク色になり、安定性にも優れていますが、色素原料のイメージの問題があり、代替品の要望が多い食品です。赤系では比較的タンパク質との相性がよいクチナシ赤色素がありますが、コチニール・ラック色素と比べるとやや紫味が強い色素になります。赤系では他にベニコウジ色素もありますが、耐熱性が強くないため、蒸し工程があるかまぼこに使う際には退色程度を確認する必要があります。その他赤褐色系としてはカカオ色素、橙黄色系として水溶性アナトーなどがあります。


 今回用いた色素のうち、ベニコウジ色素やクチナシ青・黄・赤色素などは染着性が強い色素ですが、トウガラシ色素は実は染着性が強くありません。それでもどうしてこの写真のようにきれいに着色されているのでしょうか。

 その理由としては、もちろん強制的に練りこんでいるからということもありますが、用いたトウガラシ色素の製品は油溶性の色素を水に分散するように乳化剤で乳化した製品を使用しているため、食材となじみがよくなっていることがあります。

 また、アカビート色素を除きいずれも熱への安定性が高い色素のため、蒸しても大きな退色はみられませんでした
天然色素でも案外しっかり着色することがお判りいただけるかと思います。


Recipe <約100個分(1個200g)>

 <生地>
   白身魚(タラなど)       20kg   
    塩            400g
    酒             1.5L
    砂糖           0.7kg
    卵白      
        1.9kg
    片栗粉           0.4kg
   色素(下表参照)

 <色素>  (白身魚に対して)

ベニコウジ色素
アカビート色素
ニチノーカラー MNS-R
ニチノーカラー ビートレッドCG30
40g(0.2%)
80g(0.4%)
トウガラシ色素 ニチノーカラー PE-10 60g(0.3%)
クチナシ黄色素 ニチノーカラー YN-30 40g(0.2%)
ベニコウジ黄色素
クチナシ青色素
ニチノーカラー GM-76 200g(1.0%)
クチナシ青色素 ニチノーカラー BLUE-B150 40g(0.2%)
クチナシ赤色素 ニチノーカラー クチナシR-50LB 80g(0.4%)

 


<作り方>

   ① 白身魚を氷水で揉み洗いをした後、しっかりと水をふき取る。
   ② フードプロセッサーにかけた後、ザルで裏ごしをする。
   ③ すり鉢で粘りが出るまで混ぜ、そこに塩を加えて更によくまぜる。
   ④ ③に残りの調味料と色素を添加し、よく混ぜる。
   ⑤ 成形して10分間蒸す。


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