ポッピングボバ(Popping Boba)(人工イクラ)

 2018年に韓国でブームになり、日本でも2021年に流行すると注目を集めているポッピングボバ(Popping Boba)というスイーツがあります。これは実は昔、「人工イクラ」と作るために使われていた技術を利用して、ゲルで作った球の中にいろいろな色のジュースを入れて、見た目と食感を楽しむものです。味としてはイチゴやマンゴー、ピーチなど様々なものがあるようです。  


 この元となった人工イクラですが、かつてはイクラの代替え品として流行りました。仕組みとしてはカルシウムの溶液にアルギン酸ナトリウム溶液を垂らすと球状のゲルが得られるというものです。

 ゲル化するのは、カルシウムイオンがアルギン酸ナトリウムのカルボキシル基(-COO-)を架橋する(つなぎ合わせて)ことによります。アルギン酸ナトリウムは海藻に含まれる食物繊維の一つで、水に溶かすとドロドロとした粘性を持つ物質です。一方、カルシウム溶液としては塩化カルシウムや乳酸カルシウムが用いられています。塩化カルシウムは苦みがあるため、乳酸カルシウムが用いることがあるようです。

 余談ですが、筆者は学生時代にこのアルギン酸カルシウムゲルの中に酵素を加えて酵素の固定化(固定化酵素)を行い、連続的に酵素処理を行うバイオリアクターという技術について研究を行っていたことがあり懐かしい技術です。

 今回、このポッピングボバのようなものが天然色素でできないか、再現してみました。色素はいずれも日農化学工業(株)のものを使いました。


着色見本

 球を作るアルギン酸ナトリウム溶液への着色はそれほど難しいことはありませんが、アントシアニン系色素の場合は溶液のpHを酸性にしておかないときれいな赤色にはなりません。

 今回用いたのは全て水溶性の色素又は水分散性の色素ですが、いずれもきれいなビーズを作ることができました。ポッピングボバは人工イクラよりもやや球が大きいようですので、アルギン酸ナトリウム液をカルシウム液に滴下するスポイトの口の大きさや滴下量を調整する必要がありそうです。
 
 ポッピングボバの使い方ですが、単色でタピオカのようにしてもよし、いろいろな色をミックスしてカラフルなトッピング素材として使うもよしと、いろいろ考えられます。皆様も新しい使い道を探してみてはどうでしょうか。


Recipe <約10kg分>

 <中液(球になる部分の液)>
   水もしくは酸性水     10L   
   アルギン酸ナトリウム   100g
   色素(下表参照)

 <外液>
   水            30L
   乳酸カルシウム      900g

 <色素> 

ムラサキイモ色素 ニチノーカラー 紅イモ色素M 40g(0.4%)
クチナシ赤色素 ニチノーカラー クチナシR-50L 60g(0.6%)
クチナシ黄色素 ニチノーカラー YN-30 15g(0.15%)
ベニコウジ色素 ニチノーカラー MNS-R 60g(0.6%)
トウガラシ色素 ニチノーカラー PE-10 15g(0.15%)
カカオ色素・クチナシ青色素 ニチノーカラー ブラックCG-1S 60g(0.6%)
クチナシ黄色素・クチナシ青色素 ニチノーカラー GK-S 60g(0.6%)
ベニコウジ黄色素・クチナシ青色素 ニチノーカラー GM-76 75g(0.75%)
クチナシ青色素1 ニチノーカラー BLUE-B150 15g(0.15%)
クチナシ青色素2 ニチノーカラー BLUE-CP100 15g(0.15%)

 <作り方>
   ① 水にアルギン酸ナトリウムを溶解し、そこに色素を添加して中液を作る。
   ② 水に乳酸カルシウムを溶解し、外液とする。
   ③ 中液をスポイトなどで外液に滴下し、ビーズ状の球を作る。


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