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2021/6/3 内容を更新しました。
食品衛生法が2020年6月1日から施行され、1年間の経過措置を経て今年(2021年)6月1日から規模の大小を問わず全ての食品事業者に対して完全施行になりました。この件で最も衝撃だったのが、食品産業全てを対象にしたHACCP制度化ではないでしょうか。製造はもちろん、小売り、外食、中食産業などがすべて対象となるため、業界への影響は避けられません。
今後、衛生管理の計画策定や記録保存が求められ、不備があれば営業停止などの行政処分の対象となるとされています。通常の業務に加えてのHACCP対応への準備に係る手間や時間などを考えると既に取り組みをされている企業が多いと思いますが、特に食品産業に最も身近な行政機関である保健所は新型コロナへの対応に忙殺されており、食品衛生にまで目が行き届かず、相談したくても相談できないという話も聞きます。
HACCPとは?
そもそもHACCPとは何かご存じでしょうか。HACCPは元々、宇宙飛行士の宇宙食の安全性を確保するために米国で作られた管理手法です。それまでは最終製品の抜き取り検査で、製品が腐敗していないか、異物が入っていないかなども安全性を確認していましたが、この場合はたまたま抜き取った製品のみに異常があった、もしくはなかったのであって、その結果をもって他の製品が同様に安全かというと必ずしも言い切れません。しかしながら宇宙食では万一の場合、交換するというわけにはいかないため、対象となる食品は100%問題がないものでなければなりません。
この点を確かなものにするために、製造工程中で食品安全を確保するために必須である工程をピックアップして、そこを集中的に管理しようというのがHACCPです。代表的な工程としては殺菌や金属検出などがあります。
このようなHACCPは、7原則12手順という仕組みで成り立っています。7つの原則はそれ自体が手順を示してもいますが、この7原則を実施するために必要なステップとして手順1~5が設けられています。
原則 | 手順 | 内容 |
手順1 | HACCPチームの編成 | |
手順2 | 製品説明書の作成 | |
手順3 | 用途及び対象とする消費者の確認 | |
手順4 | 製造工程表の作成 | |
手順5 | 製造工程表の現場確認 | |
原則1 | 手順6 | 危害要因分析の実施(ハザード分析) |
原則2 | 手順7 | 重要管理点(CCP)の決定 |
原則3 | 手順8 | 管理基準(CL)の設定 |
原則4 | 手順9 | モニタリング方法の設定 |
原則5 | 手順10 | 改善処置(是正処置)の設定 |
原則6 | 手順11 | 検証方法の設定 |
原則7 | 手順12 | 記録と保存方法の設定 |
簡易型HACCP
なじみがない用語でひるんでしまうかもしれませんが、今回のHACCP制度化では、小規模事業所(※)はいわゆる簡易型のHACCPの適用が可能になっています。これはHACCPの考え方を取り入れた上で必要最低限に簡略化され、かつ各業界団体が予め手引書を作成しているために、より各業態に寄り添い取り入れしやすくなっているのが特徴です。
具体的には、以下の内容を実施していればHACCPを遵守しているとみなされるというものです。
①自分の業種・業態に関連がある手引書の解説を読み、何が危害原因になるのか理解する
(例えば殺菌が不十分だと食中毒を引き起こすなど、食品安全上リスクが起きますね、そのようなことをピックアップします)。
②手引書の雛形を用いて衛生管理計画と、必要に応じて手順書を準備する。
(「まな板を1日1回次亜洗浄するようにする」「フライをあげるのに170℃で10分以上をかける」などのルールを作ります。)
③ ①②の内容を従業員に周知する。
(オーナーや店長だけが分かっていてもダメですよね。実際に食に携わる人を動かさないと実効性がありません)
④手引書の記録様式を利用して、衛生管理の実施状況を記録する。
(ただ実施しましたというのだけではダメで、第三者が見ても分かるように確かに実施されたということを記録に残さなければなりません)
⑤手引書で推奨された期間、記録を保存する。
(もし何かクレームがあった場合、一緒に作ったものに問題がないかなどトレースを行ったり、第三者が確認できるように記録を保存しなければなりません)
⑥記録などを定期的に見直し、必要に応じて衛生管理計画や手順書の内容を見直す。
(見直すことで、例えばルールを設けたおかげでクレームが減ったとか、逆に虫が増えたなどが分かり、それに応じた対策を講じる機会になります)
なお各業界団体が作成した手引書は以下の厚生労働省のサイトにまとめられており、誰でも自由にダウンロードして使うことができます。
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(厚生労働省サイト)」
手引書を使ったHACCP構築についてはもちろんのこと、従業員50名以上の食品事業者に適用される通常のHACCP管理についてもコンサルティングを承っていますので、ぜひお問い合わせください。
※小規模事業者とは以下とされています。
・食品を製造し、又は加工する営業者であって、食品を製造し、又は加工する施設に併設され、又は隣接した店舗において、その施設で製造し、又は加工した食品の全部又は大部分を小売販売するもの(例として菓子の製造販売、豆腐の製造販売、食品の販売、魚介類の販売など)
・飲食店営業又は喫茶店営業を行う者その他の食品を調理する営業車(例としてそうざい製造業、パン製造業、学校・病院などの営業以外の集団給食施設など)
・容器包装に入れられ、又は容器包装で包まれた食品のみを貯蔵し、運搬し、又は販売する営業者
・食品を分割して容器包装に入れ、又は容器包装で包み小売販売する営業者(例として八百屋、コメや、コーヒーの量り売りなど)
・食品を製造し、加工し、貯蔵し、販売し、又は調理する営業を行う者のうち、食品等の取り扱いに従事する者の数が50人未満である事業場
(これは事業場単位であって法人単位ではない)
なお、ここに挙げられている中でも、農業や水産業など、食品の採取に関わる業種は今回のHACCP制度の対象外になっています。
一般衛生管理も大事
HACCP制度化の動きは、食品事業者であればおさえておかなければならない重要なキーワードですがその他に、ある意味ではHACCP以上に重要なことがあるのをご存じでしょうか。例えば殺菌は時間、温度共に完璧に測定し、記録して管理しているけれど、その厨房で生ごみが放置されてたり、ネズミの糞や虫の死骸があったりしたらどうでしょうか。とても衛生管理ができているとは言えないのではないでしょうか。
つまり右図に示したように、5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)又は7S(5S+洗浄、殺菌)と、基本的な衛生管理が土台になっていることが分かるかと思います。この衛生管理の部分は一般衛生管理(PP又はPRP)と呼ばれており、厚生労働省が出している「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」には具体的に以下の項目が挙げられています。
1.食品衛生責任者等の選任
2.施設の衛生管理
3.設備等の衛生管理
4.使用水などの管理
5.ねずみ及び昆虫対策
6.廃棄物及び排水の扱い
7.食品又は添加物を取り扱う者の衛生管理
8.検食の実施
9.情報の提供
10. 回収・廃棄
11. 運搬
12. 販売
13. 教育訓練
14. その他
通常であれば、HACCPを構築する際にはこれらへの取り組みも含めて考えていく必要がありますが、実は簡易型HACCPでは、各業界団体が作成している手引書の中でこの一般衛生管理の項目も網羅されています。従って簡易型HACCPの場合はあまり意識せずとも仕上がってしまうこともありますが、実際にはこのような仕組みになっていることは知っておく必要があるのではと思います。
当研究所とHACCP
当研究所は、日本でHACCPの普及にいち早く取り組んでいる(一社)日本HACCPトレーニングセンターで研修を受けたコーディネーターが在籍している他、グループ会社の日農化学工業(株)が取得している彩の国ハサップ(埼玉県食品衛生自主管理優良施設)及び、HACCPを含み食品安全に関する世界的な認証制度であるFSSC22000の取得にも携わっており、HACCPの取得を強力にサポートすることができます。
特に同社は社員17名という中小企業ながら、他社に先駆けてHACCPは2012年から、FSSC22000は2015年にそれぞれ取得して維持し続けているという実績があります。従って、単なるコンサルティングだけでなく、小さい会社でもこうすればHACCPや更にはFSSC22000の取得ができるという視点から御社をフォローすることができるかと思います。
小さい会社であればあるほどこのような、直接売上げにはつながらず、かつ馴染みがなく難しそうなことへの取り組みには抵抗感があると思いますが、HACCP制度化は国際的な流れであり、ますます食のグローバル化が進む今後の食品業界の行方を考えると、避けて通れないものになりつつあるのではないでしょうか。興味はあるけど知識も予算もない、そのような会社を私たちは応援したいと思いますので、
「具体的にいつまでに何を行えばいいのか」
「費用はいくらくらいかかるのか」
「費用をかけたくないがどうしたらよいか」
など、どのようなことでも構いませんのでお気軽にお問い合わせください。