名称 | アナトー色素/ Annatto extract | ||
概要 | 本品は、ベニノキ(Bixa orellana L.)の種子の被覆物から得られたもので、ノルビキシンを主成分とするもの及びビキシンを主成分とするものがあり、それぞれをノルビキシン及びビキシンと称する。デキストリン、乳糖又は食用油脂を含むことがある。 | ||
INS No. | 160b | E No. | E160b |
色調 | 赤色 | 染着性 | ◎ |
溶解性(水) | × | 溶解性(油) | 〇 |
耐熱性 | 〇 | 耐光性 | △ |
金属の影響 | なし | タンパクの影響 | なし |
分類 | 既存添加物/食品添加物公定書 | ||
特徴 | 水に不溶で油脂に溶ける/アルカリ加水分解を行い水溶化した水溶性アナトーは指定添加物 | ||
ニチノーカラー | |||
食品への表示例 | アナトー色素、アナトー、カロチノイド、カロチノイド色素、カロテノイド、カロテノイド色素 | ||
使用基準 |
本品は以下の食品には使用できません。1.こんぶ類、食肉、豆類、野菜類、わかめ類(これらの加工食品は除く)。2.鮮魚介類(鯨肉は除く)、茶、のり類 |
アナトー色素はベニノキの種子を覆う赤橙色の果肉から得られる、中南米を原産とした赤色の色素で、現地では色素の他、香辛料や繊維の染料としても用いられています。日本では既存添加物として食品の着色に用いられており、第9版の食品添加物公定書から収載されました。
色素の主成分はビキシンとノルビキシンの2つのカロテノイドで、抽出方法の違いで両者の割合がそれぞれ異なるアナトーAからアナトーGまでが分類されており、JECFAではそのうちアナトーBからアナトーGまでの規格が定められています。日本ではアナトー色素の中にビキシンとノルビキシンを含む形で公定書に収載されています。
アナトーA(Annatto A):
溶剤抽出/~20%がビキシン/商業利用はされていません
アナトーB(Annatto B):
溶剤抽出+精製+結晶化/ビキシンとして85%以上
アナトーC(Annatto C):
溶剤抽出+結晶化+ケン化+加水分解+酸沈殿+精製+乾燥粉末化
/ノルビキシンとして85%以上
アナトーD(Annatto D):
溶剤を使わずに油脂抽出/ビキシンとして10%以上
アナトーE(Annatto E):
冷アルカリ下油脂抽出+酸沈殿+精製+粉砕/ビキシンとして25%以上
アナトーF(Annatto F):
冷アルカリ下油脂抽出+アルカリ加水分解+酸沈殿+精製+粉砕
/ノルビキシンとして35%以上
アナトーG(Annatto G):
冷アルカリ下油脂抽出+アルカリ加水分解+精製+乾燥
/ノルビキシンとして15%以上
メチルエステル体であるビキシンは水に不溶で油溶性ですが、アルカリ下で抽出するとメチルエステルが加水分解されてノルビキシンとなります。このノルビキシンのアルカリ塩(カリウム塩又はナトリウム塩)は水溶性で化学合成品として扱われ、日本では指定添加物の「水溶性アナトー」として規格があります。水溶性アナトーは欧米では「チーズカラー」と呼ばれ、古くからチーズ(チェダーチーズ、グロスターチーズ、レッドレスターチーズなど)やチーズ製品(アメリカンチーズ)、バターやマーガリンなどの乳製品の着色に用いられています。
色素としての特徴は、ビキシンは油脂に溶解し、水には溶解しません。他のカロチノイド色素と同様に耐光性がやや弱い半面、耐熱性は比較的強く、またビタミンEなど酸化防止剤の添加で安定化させることができます。一方ノルビキシンはアルカリ溶液に可溶ですが水、油脂にはほとんど溶けません。
用途としては、油溶性のビキシンはバターやマーガリンなどの油脂製品に使われています。一方ノルビキシンは水に乳化分散させてアイスやチーズなどの乳製品や菓子類に、また水に懸濁させた水溶性アナトーとして、染着性に優れた特徴を生かしてソーセージやタコなど水産加工品の表面の着色に使われます。

着色例
・かまぼこの着色